土地問題過去記事その9 土地評価は4250万円

専管→いってに管理すること
専決→その人の意見だけで決めること。また、勝手に裁決すること
by広辞苑

ホントに議員の発言か?

で、実はかねてより公社取得の土地についての調査を不動産鑑定士に依頼していたのだが、その結果が出た、のが採決当日18日の午後。残念ながら、本会議の採決が終わった後だった。

結論から言うと、価格は4250万円(市公社の取得金額は1億0850万円)が妥当であり、市の鑑定には問題を含む、というもの。
これは非常に協力な武器だ。

これまで、私たちは
1.取得の理由
2.取得の経緯
3.取得金額

を争点としてきたわけだが、3.は不動産鑑定の専門領域であり、私たち議員には荷が重いというのが正直なところで、議会での議論は1.と2.が主なものだった。
この二つに関しては、市側の不当性は一定程度明らかに出来たと思うが、最後は関係者の「証言頼み」となってしまい、限界があった。
物的証拠は唯一、農水課の文書だけであり、それとて農水課以外の関係者に一斉に口裏合わせをされると効果が薄れてしまう。

そこで、3.で勝負に出るには、向こうが不動産鑑定書を根拠にする以上、こちらも鑑定士に調査を依頼して問題を明らかにするしかない、と判断。
有志議員とともに不動産鑑定士に価格調査及び市側鑑定についてのセカンドオピニオンを依頼したのだ。
これが5月。
6月定例会での100条委設置をめざしているので、閉会までに調査報告書を作成してもらうようお願いした。

そして、約束通り会期中に仕上げてくれた。
各会派の代表2名が作成者より説明を受け、23日の決戦に備える。
それにしても、専門家というのは大したもので、説明は簡潔明瞭。こちらの理解は深まった。
これを武器に「再度議員提案をしよう」と4会派がまとまり、
23日最終日に「100条委設置」の議員提案をおこなったのだ。

提案議員は他の市議からの質問を受けなければならないのだが、与党市議からの質問は殆どなかった。準備万端、とは言えないが、調査報告書のレクチャーを受け、論点整理して質問を待ち受けていたのだが。

まあ、どうみてもこちら側より与党側の方が土地価格についての知識では分が悪いから、あまり質問しないのは議会戦術上は得策、とは思う。

与党はむしろ、3大紙が一斉に「市取得の半値以下」「4250万円」と報じた事に対して市側も抗弁したいだろう、という事で市に抗弁の機会を与えるような質問をして役目を果たした格好、と言えよう。

経営企画部長は、
「議員が得たのは調査報告書であり、正規の鑑定書ではない」
「正規の不動産鑑定書だけが公的に通用するものだ」
「鑑定書は正常価格の証明書として通用するが、調査書は正常価格であると主張することはできない」
みたいなことを強調していた。
これは、その通りだろう。
公共用地の取得の際には、鑑定書、でなければならないのは確かだ。だから、市も鑑定書を得ており、それを基に取得金額を決定している。
一方、私たちが得たものは、あくまでも「調査報告書」であり「鑑定書」ではない。
だが、国家資格を有する不動産鑑定士がつけた価格という点に違いはなく、法的には同等の効力を持つ。
それに、そもそも私たちがあの土地を税金を使って買うわけではないのだから、鑑定書である必要もない。ようは価格が分かればよいのだ。

報告書と鑑定書の違いくらいにしておけばよいのに、技術的な点についても部長はいちいち反論していたが、市の部長が専門家の調査に対してああだこうだとケチをつけるのはいかがなものだろう。

これに関しては長くなるので今回は割愛し、次回以降に答弁の問題点を明らかにしていきたい。

今回はとりあえず、部長が何度も強調していた
「正常価格」
について、少し触れたい。

不動産鑑定における正常価格とは?
国交省が定める不動産鑑定評価基準では

「正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう」

とある。
説明したい。
まず
1.市場性を有する不動産について

みなさんも家を買ったり借りたりした経験があると思うが、ようは不動産屋の店頭やインターネットの不動産サイトなどが通常の市場、という意味だ。
「限られた人しか知らないお宝物件」
みたいなのは市場性を有する、とは言えないわけだ。
比較的簡単な話だ。

つぎに
2.現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場について

(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が事由であること。なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。
1.売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機がないこと
2.対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること
3.取引を成立させるために通常必要と認めらる労力、費用を費やしていること
4.対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断をおこなうこと
5.買い主が通常の資金調達能力を有していること

(2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘因したりするような特別なものではないこと。

(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること

これらの条件を満たす市場に、対象不動産が売りに出されたとして、適正な売買成立価格はいくらかと推量した結果導きだされたのが正常価格、とされている。

市公社の鑑定書は「正常価格」となっている。
で、件の土地はどうだろう?
「市場性を有する」といえるか??
「合理的と考えられる条件を満たす市場」で売れる価格、といえるだろうか??

ちなみに、鑑定書には正常価格の他「限定価格」とか「特定価格」「特殊価格」というものが用いられる。

「特定価格」というのは不動産投資信託のような利ザヤ狙いの転売前提のようなものに用いられ、「特殊価格」というのは文化財指定を受けた建造物など、通常の市場で取引されることのないものに用いられる。

で、限定価格について。
よく、下世話に
「となりの土地は倍出しても買え」
などという。

道路に一部分面しているような「ハタ地」の所有者が、間口が全部道路に面している隣地を買うような場合、他の人よりも高値で買う動機がある。
この人の土地資産をみた場合、新たに買った土地という資産が増えるだけでなく、従来の自分の土地全体の価値も上がることになるわけで、他の人よりも高い値段で買う意味が大いにあるのだ。
こういう場合、適正価格は限定価格、なわけだ。

誰がみても同等の価値…正常価格

人によって価値が異なる場合
(となりの土地は倍出しても買う)
…限定価格

「5年前3000万円なのに、なぜそれが1億円もするの?」という疑問に対し、
「民間と行政とでは取得金額が違う」
という主張が連合審査会などで度々なされていた。
本件がそうかどうかはまた別の機会に論じたいが、そういう場合が無い、とは言わない。あり得るだろう。
しかし、買う人次第で価格が異なるならば「正常価格」ではなくて「限定価格」の鑑定でなければならない。

で、繰り返すが本件は「正常価格」で鑑定されているのだ。
ホントに正常価格で良かったのか?
(この項つづく)