原田氏の論点は、大きく言うと
1.土地取得の緊急性・必要性が乏しく、取得に至る手続きが不当
2.取得金額が不当
ということになろう。私たちが議会で問題にしているのも同様の点である。
そして、監査委員会は原田氏の監査請求を受理、審査を行った。
結果は「合議不調」で、委員間で意見が真っ二つに割れた、ことは以前も当ブログでお伝えした。
賛否両論のうち、私は「市は不当」という意見を支持しているので紹介させて頂いたが、今回は原田氏の訴えに対する市の反論(正確には「市長の陳述書」)の要旨を掲載したいと思う。
~市の反論~
(1)価格の妥当性
取得価格の参考とするために、不動産鑑定士に鑑定依頼した。
不動産鑑定士は最有効使用を「宅地分譲の敷地」として判定し、
1.取引事例比較法
2.開発法
3.基準値からの基準価格
の3つの方法で試算した上で、取引事例比較法による「比準価格」を採用し評価額を算出。取得金額は適正だ。
(2)取得依頼の必要性
「(緊急性がない土地を購入しながら)『地元の総意はどこへ』いまだ具体的な利用計画が存在せず全く説明に整合性が見受けられない」と請求人は主張しているが、
市としては、善行地区自治会連合会から出された陳情を受け
1.善行地区内のほぼ中央に位置
2.善行駅からも至近
3.「金子の森緑地」及び都市計画決定された公園予定地を含め一体的に整備する
これらのことから、陳情書にあった市民農園としての利用に限らず、高齢者の農業体験を始めとして地区内の市民が集えるコミュニティづくりのための場となると判断し、陳情書の趣旨に沿って購入を決めたものだ。
利用計画は、近隣地権者との話し合いを進める一方で、地域経営会議においても検討を進め、それらを踏まえて行政主導ではなく地域主体で整備計画を具体化していく考えであり、この間の説明に何ら不整合はない。
(要旨は以上)
原田氏の監査請求・受理が2009年12月7日で、年内に調査開始。
監査委員会での市側の反論が年が明けた2010年1月12日。そして、監査結果の公表が2月3日であった。
市側の陳述の後、1月27日・2月3日・4月23日に市議会で参考人質疑が行われ、昨年9定以来が繰り返してきた市の説明の矛盾点が浮き彫りになったわけだが、監査委員会は議会とは別に審議を行っていたのである。
監査委員の指摘は私たち議員とは違う視点からなされており、大変参考になるものだ。
一方で議会での参考人証言で市の矛盾点が明らかになった部分も少なくないが、議会答弁は監査意見書には反映されてはいない。
住民監査請求をうけて監査委員会が調査を行った時点では、市民農園設置要望は地元の総意ではなかった、という情報はなかったのだ。
市の外部に調査権限が及ばない中で、識見委員が不動産鑑定など専門的・技術的な領域にも踏み込んで「市は不当」との判断を示したわけで、識見監査委員の調査能力に敬服すると同時に、議会は議会で存在感を示すことができたと思っている。
「地元の総意」が陳情者本人から否定され、善行地域経営会議での議論も進んでおらず、当事者間の食い違いが表面化した今、改めて
監査請求は棄却
とした監査委員に今でも同じ意見かどうか、聞いてみたいところだ。