地域経営会議は違法ではないか?その2
引き続き、昨年の記事を紹介しよう。
昨年の2月定例会の一コマだ。まもなく一年が経つが、私は当時から、
「条例に基づかない会議は違法ですよ!」
と市を質したが、当局の説明は
「市長の裁量権の範囲内です」
だった。
そんなのってアリか??
~昨年記事の引用ここから~
2010.03.16 Tuesday
題名:予算案に反対
昨日予算委員会の採決がおこなわれ、我が会派は来年度予算案に反対した。
私が議員になって、予算に反対したのは初めてのことだ。
反対した理由は、総合計画反対と同様に
「地域経営会議」
に疑義がある、ということだ。
私は、地域経営会議は地方自治法「第138条の4の3」に定める執行機関の
「付属機関」
に該当するのでは、と考えている。
~地方自治法から引用~
第二節 普通地方公共団体の長
法第百三十八条の四
3.普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。
~引用以上~
この条文にあるとおり、法令で設置が定められている委員会のほか、市独自の審議会などを設置することができる。だが、当然ながら、勝手に設置できるものではなく、議決が必要な「条例」による設置が要件とされているのだ。
~地方自治法から引用~
第七款 附属機関
第三節 委員会及び委員
法第二百二条の三
1.普通地方公共団体の執行機関の附属機関は、法律若しくはこれに基く政令又は条例の定めるところにより、その担任する事項について調停、審査、審議又は調査等を行う機関とする。
2.附属機関を組織する委員その他の構成員は、非常勤とする。
3.附属機関の庶務は、法律又はこれに基く政令に特別の定があるものを除く外、その属する執行機関において掌るものとする
~引用以上~
「地域経営会議」の事務局は各センターに設置され、年200万円程度の運営費をもらい政策立案をおこなう、ことになっているのだが、これでは自治法にある「執行機関の付属機関」そのものであり、設置するのならば条例によらなければならないはずだ。
だが、現状は要綱による設置に過ぎない。これは法令及び条例による設置を定めている自治法202条に触れるのではないか、と市側を質すと
「市長の裁量権の範囲だ」
ということだった。
~地方自治法から引用~
法第百四十八条
普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。
法第百四十九条
普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。
二 予算を調製し、及びこれを執行すること。
三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。
四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。
五 会計を監督すること。
六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。
七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。
八 証書及び公文書類を保管すること。
九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。
~引用以上~
つまり、市長の執行権にもとづき設置された会議であり適法だ、という言い分だ。
だが、「202条の3」との関係はどうなるのか?
執行権の濫用ではないだろうか?
これが認められるのなら、極端な話、公金を使って市長の後援会を各13地区に設置する、ということも認められてしまうのではないか?
事実、地域経営会議は、原則「各地区委員は20名」となっているのに「市長が特別に認めた場合」には増やせるようになっており、ある地区では委員が30人を超えている。
経営会議内部に市長のお気に入りを増やそう、と思えば簡単に出来てしまうわけだ。
だからこそ、付属機関を設置する際には法令あるいは条例による設置を条件にすることで、恣意的な運用や委員の人選を牽制する、というのが法の精神だと思うのだが?
また、市は「地域経営会議」は藤沢独自の方式で全国に誇れるものだ、と胸を張っているが、もっと進んだとり組みは各地でおこなわれており、地域自治区等の現行制度の焼き直しにすぎない、と私は思う。
さらに、以前も触れたが、「意思決定機関」と謳いながら、当たり前だが「地域経営会議の決定は最終決定ではなく(議会による)議決が必要だ」と矛盾したことを平気で言っている。
全くもって意味不明、としか言いようがない。
いずれにせよ、地域経営会議は大きな問題をはらんでいる。引き続き精査していきたいと思う。
~昨年の記事からの引用は以上~
「市長の裁量権」か…。
いやあ、市長ってすごいな、これならば議会はいらない。
ここで「地方自治の本旨」について、説明したい。
憲法に謳われる地方自治の本旨とは「団体自治と住民自治」を指している。
団体自治は「執行機関」。
住民自治は「議決機関」。
つまり、団体自治は「市長(市役所)」で、住民自治は「議会」なのだ。
この二つをして「二元代表制」と言ったりするが、つまり、市長と議会は「相互牽制・相互監視」の関係、「チェック&バランス」の関係だ。
片方が突出すると、判断を誤った時の弊害が大きいのだ。だから、自治体権力を「分権」している。
この分権機能は、私の解釈だと「良いことをするための」分権ではなくて、「悪いことをしないための」分権なのだ。
今や議会不要論が渦巻いている。善行土地問題でも明らかなように、「市長与党」を公言する議員の姿を見ていると、議会不要論も宜なるかな、と思う。
さて、二元代表制に基づいて、市長の恣意的な市政運営を封じ込めるために重要案件は「議決事項」となっている。
議会の意思決定をもって「市の意思決定」が確定する仕組みなのだ。
という見地からすると、昨年の当ブログ記事にもあるとおり、議決を経ない地域経営会議の設置も「市長の裁量権の範囲内だからかまわない」という解釈を市当局は示してくれたが、逗子の例で見るように明白に違法だし、そもそも憲法のいう「地方自治の本旨」、二元代表制を全く理解していない、と言わざるを得ない。
まるで阿久根市、あるいは名古屋市のような市政運営だが、私は竹原市長・河村市長はある意味で真っ当だと思う。
彼らは議会を敵視し、二元代表制そのものに挑戦しているように見える。
だがそれは
「市長が市民の声を反映しようとしているのに、議会が抵抗している。ということは、議会は市民の敵だ!」
という態度であり、それ自体は市議の私自身すら丸っきり理解できないでもないし、自分の土俵で精一杯の勝負をしている事自体は私は立派だと思っている。
とかく自治体の首長は、「国が権限を手放さない」「国が自治体の自由を奪っているから住民本位の市政運営が出来ない」とか言って国を攻撃する。これも間違ってはいないだろうが、それ以前に自分の自治体でやるべき事はいくらでもあるはずで、自治が上手くいかないからって国を責めるのは、なんだか子供が大人に楯突いているように私には映ってしまうのだ。
といった理由から、前記の両市長(竹原氏は元市長、となったが)は国にゴチャゴチャ言う前に、
「自分の土俵で勝負している」
と、私は評価するわけだ(両市長が素晴らしい、と思っているのではなくむしろ逆だが、敢えて言ってる、とご理解を)。
翻ってわが藤沢市長は、市長与党議員にいい顔をし議会を押さえているつもりかもしれないが、その一方で「地域経営会議」のような議会否定の取り組みを大まじめに推進している。
一体どっちなんだ?
「地域経営会議は地域自治の意思決定機関」なんて議会否定の取り組みをするのならば
「市議会と真っ向から対立してみよ」
と言いたくなる。
なんだが話が脱線した嫌いがあるが、地域経営会議の顛末から市長自身の政治姿勢が伺えると思ったので敢えて触れてみた。