市長選挙総括 数字から見てみる
前回のエントリは、私のイメージの一端をお伝えした。ので、今回は、少しプロっぽく?この市長選挙を見てみよう。
2012年の藤沢市長選挙は、共産・社民党、市民グループなどが自民党系の候補を支援するという異例のモノとなった。
私は、現職は支持できない。ので、自民党系の現職に対抗するため、当初は相応しい人がいれば民主党として市長選挙に臨もうと考えていた、ことは以前お伝えした。
だれが市長(候補)に相応しいのか?
41万市民の代表に相応しい人物、というと何とも大げさな感じがしてくる。
高潔な人格・卓越した識見の持ち主で、多くの人を束ねるリーダーシップがあり困難に進んで立ち向かう…。
まるでスーパーマンである。
理想かも知れないが、どうだろう、そんな人はいるのか?なので、言い方を変えよう。
「勝てる候補者」
というのが卑近な表現になる。
このところの市長選や市議選などの投票率からすると、例えば当選には5万票程度が必要だ、と仮定しよう(実際、今回の当選者は5万票を得た)。
で、5万票を取れる人→勝てる候補→市長選挙候補に相応しい人、ということになる。
民主党(的、でもよい)から出る候補ならば、まず既存の民主党支持層を固められる人、というのが当然ながら第一条件となろう。
民主党の支持層とは?民主党の基礎票は藤沢ではどの程度あるのだろうか?
そこで直近の選挙の民主党候補の票を見てみると
2011年4月県議選の民主党候補の得票
齋藤健夫…15547票(当)
井手拓也…14305票(落)
民主党候補合計 29852票
投票総数136355票、候補一人あたり平均得票数15150票
民主党2人を足した得票率21.89%
2011年4月市議選の民主党候補の得票
井上祐介 …3565票(当) 無所属、党推薦
柳田秀憲 …3178票(当) 党公認
三野由美子…2744票(当) 党公認
永井譲 …2546票(当) 党公認
佐藤清崇 …2133票(当) 党公認
計 14166票
連合(民主系)候補の得票
大矢徹 …3253票(当) 無所属
竹村雅夫…3176票(当) 無所属
浜元輝喜…3133票(当) 無所属
計 9562票
民主系合計 23728票
投票総数124413票、候補一人あたり平均得票数2893票
民主系8人を足した得票率19.07%
※参考
県議選得票
鈴木恒夫…21274票、得票率15.6%
これが、直近の選挙の結果だ。
民主党は政権奪取後、沖縄問題、参院選大敗、震災・原発事故対応や消費税問題等々で大揺れであり、党勢は非常に厳しい状況だ。
その中で、県議選については投票総数136355票を立候補者9人で割った一人あたり平均得票数は15150票となる。
市議選は投票総数124413票を立候補者43人で割った一人平均は2893票である。
県議選で民主2人合わせて得票率は21.89%、各候補の得票も候補者平均の前後と苦戦を強いられ、1議席を失った。
市議選では全員当選を果たしたものの、8人を足しても全体での得票率は19.07%、各候補の得票はやはり平均前後以下。
有権者の厳しい審判を受けた。
常識的に見れば民主党(系)だけの力で市長選を戦える状況ではない。
あるいは、上記の県議・市議の中から5万票取れる候補者がいるだろうか?
非常に単純な分析である。
また、2011年の4月から、市長選挙がある2012年2月までは10カ月あるわけで、その間の我が方の取り組みが強化されたり、100条委の進展といった情勢が変化する可能性もあろうから、4月の選挙は参考に過ぎない、という見方はあるかもしれない。
だが、4月の県議選で、民主系市議の総得票に匹敵するような票を一人で得てトップ当選を果たした鈴木恒夫氏が「勝てる候補」と目され、より多くの人に担がれる存在になって何ら不思議ではない。
私は以前、当ブログで「民主党による市長擁立への期待が高まっているとは思えない」という趣旨の事を述べた。
4月の統一選の結果にもあるとおり、民主党政権への有権者の厳しい見方など、ハッキリ言って我が党は劣勢である。
一方の現職市長も不祥事が頻発し劣勢に陥っており、現職の県議・市議以外で勝てる候補・5万票が見込める候補が見つかれば勝負する目もあったかも知れないが、結果として見つからなかった。さりとて、現職地方議員への期待も高まらない。逆風下の厳しい選挙でやっと得た議席を失ってまで市長選挙に擁立するのだろうか…。
ということで、「民主党として市長選に打って出る」という考えを私は捨てた。
その中で、三野由美子氏が勇気を持って出馬したことは天晴れではある。
彼女なりに市政へ危機感をもち、民主党市議としての誇り故の決断であったのかもしれないが、結果として貴重な市議会一議席を失うことになった。
その点は残念でならない。
今回の三野氏の22320という得票を見てみると、投票総数116223のうち19.2%という得票率になる。
民主党の推薦はなく連合神奈川推薦、という枠組みでの選挙であったが、市議選の民主党系全体の得票率と符合している。
勝てる候補、というと、何か有名人とかを連想するかもしれないので、真面目な?言い方にかえよう。
勝てる候補、とは5万票程度を見込める候補。
すなわち「5万人の思いを託せる候補」ということなのだ。そして鈴木恒夫氏に自民の一部及び野党系各派の(支持者の)思いが託された。
政治的立ち位置は、穏健な保守。これにより、左派勢力も乗れる。
「生粋の藤沢っ子」ということも現職との対立軸をつくれる。
この二つの要素に加え、市政1期目にして不祥事が頻発する現職に対して鈴木氏は市議4期・県議5期という安定感。
これらが相まって鈴木氏は海老根市長の「有力対抗馬」として「完成した」のだろう。
得票51876、得票率は県議選の15.6%を大きく上回る44.6%だった。
「争点無き選挙」と言われた今回の選挙。確かに具体的政策では大きな争点はなかったかもしれない。
だが、上述したような人柄を問うと現職との違いは明確になってくる。そして、こうした事は、41万市民の隅々まで伝わる事ではないのかもしれない。あるいは、「人柄」など所詮は好き嫌いになってしまうのかもしれない。
なので低投票率になった、という分析も可能だろう。
いずれにせよ、低投票率が常態化しているのが今の藤沢の地方選挙だ。
人口41万人、有権者33万人もいる市の市長が5万票程度で決して良いのか?
その事を嘆く、さらには投票率を上げる努力を模索する事も大切だろうが、一方でこれが現実なのだ。低投票率の選挙をどう乗り切るのか、という視点も大切になる。
そこには一発逆転、というような要素はない。飛躍はないのだ。コツコツと、一人ずつ支持を広げていくしかない、ということだろう。
なんだか非常にアタリマエの結論だな。
この藤沢でも、名古屋や大阪に見られるような「敵か味方か」を迫りアジテーションが巧みな有名人の候補者が出てきたりすると、投票率は上がるかもしれない。そうした時に、低投票率での闘いしかしていない私たちは敗北するだろう。
それでも私は漸進的なやり方を選ぶし、それしか出来ない。
そして、それが正しいと信ずる。
鈴木恒夫新市長の闘いから、そのことを学んだ気がする。