善行土地問題 中間報告書その2

中間報告書の中で一番重要なのは「結論」である、のは言うまでも無い。
当委員会として、市の土地取得は不当なのか、どうか。これである。

で、結論にいたるには、証言及び証拠資料等の「解釈」をどうするか、というプロセスが必要になる。
証言は沢山あるが、証拠となると乏しい。更に言えば、この土地取得はおかしい、という立場からの証言となると、かなり少なくなってしまう。
そうした中で結論を導かなければならず、推論が多くなってしまうのはやむ得ない。
私としては、
市による土地取得の「正当性」を主張する証言
市による土地取得の「不当性」を裏付ける証言
を照らし合わせ、合わせて証拠書類などから事実を類推するしかない。どこまで真相に近づけるだろうか。

とりあえず、時系列で本件を追っていこうと思う。
今回は、事の発端から、自治連の陳情が出されるまで、具体的には2008年7月について、見ていこう。

2008年7月
1.
前所有者M氏、矢島市議に対し、売却先を探すよう依頼
2.矢島市議、民間数カ所に打診するも売却先が見つからず、市へ相談

柳田解説
1.前所有者M氏は、不動産取引の経験が豊富であり、業者とも昵懇。当該土地を売却する際に、民間への売却を検討するのならば、既知の業者に依頼するのが自然であろう。
さらに、隣地所有者に「6000万円」で買い取るように打診し断れた経緯もあり、当該土地が
「生産緑地に囲まれた農地で、かつ無道路地」
という特質上、民間で買い手が見つかる可能性が極めて低いことは十分承知していたと考えられ、
「(市議に頼んだが)市への売却を前提としていない」
というM氏の証言は?だ。

2.矢島市議についても、上記に加えて、市議である自分自身に売却の相談があるということは、市への売却を依頼されていない、と受け取るのは不自然であり、市への売却を特に意識していなかったという言い分は?だ。

つづいて同7月
3.
矢島市議、善行市民センター中山主幹に対し「電話で」当該土地の概要を説明。市が取得して住民利用に供する活用方法を検討するよう依頼
4.中山主幹、奈良財政課課長補佐に「電話で」矢島市議からの依頼内容及び当該土地の概要を説明、取得の可能性及び概算金額の算定を依頼

柳田解説
3.当該土地は農地かつ無道路地で、明細地図上では境界が不明確であり、同地図を見ながら電話での会話によって正確な場所を特定することは困難と思われる。
また、土地という高額な不動産を照会・確認する際には、登記簿謄本や公図など公信性を有する書類を用い、さらに現地に出向くなど実地調査まで行うのが通常だろう。
以上から、「地図のみ」のやり取りで、電話によって場所を確認しただけですぐに財政課に相談し、その後も現地を見ていないという中山主幹の証言は極めて不自然である。

4.中山主幹は、財政課に相談・依頼する前に、直属の上司である鈴木善行市民センター長に報告し指示を仰ぐのが職制上当然あるが、「下調べの段階であり報告は不要と思った」と証言している。
しかし、直属の上司に報告せず、部外の職員に相談するなど、怠慢というよりも越権ではないか?中山主幹の証言は?である。

同7月つづく
5.
奈良補佐、中山主幹の依頼を受け、当該土地を取得する場合、公社が予備的に見込んでいる当初予算の範囲内に価格が納まるか確認する必要がある事と併せ、現地が農地であり無道路地なので、自身の経験から概算金額を算定することができず、中島土地開発公社参事に概算金額を算定することについて、相談する。

6.奈良補佐、及び中島参事とも、現地が無道路地ということもあり、概算金額を算定することが困難だと考え、不動産鑑定士に依頼することにする。

7.これと前後して、奈良補佐は新井副市長に「矢島市議から」「中山主幹を通して」土地の取得相談があったことを報告。

柳田解説
5.奈良補佐は、中山主幹からの「電話のみ」による依頼で、直ちに中島土地開発公社参事に相談・依頼したと証言しているが、この時点では事業計画は全く存在しておらず、中山主幹から土地の概要しか知らされていない。
そうした中で、中山主幹の説明を真に受け善行市民センター長や市民自治推進課への確認をせずに土地公社に依頼・相談するとは、財政課職員の行動として?である。

また、奈良補佐は、土地公社に依頼する際「上からの話」と告げた事は、公社職員に「予断を与える事を承知の上」での発言と見るべきであり、奈良補佐が公社に相談・依頼した時点で既に土地購入する意思が市に存在した蓋然性が高い。

6.この時点で、「民間では買わない土地」との認識があった。

7.奈良補佐は、「矢島→中山→奈良」について、新井副市長に報告し、その際の副市長の様子については「特に言及はなかった」と証言している。
ならば、中島参事に「上からの話」と伝えたことは辻褄が合わないが、これについて奈良補佐は「取得するのなら、副市長の決裁が必要になるので、それを意識して『上からの』と言ったのかもしれない」としている。こんな事は言わずもがなのことであるし、中島参事の証言と食い違っている。
ちなみに、奈良補佐は以前は「議員からの話なので、上から、と言ってしまった」的な発言をしている。

一方、当の新井副市長は、「7月に現地を見に行った際、周辺と一体整備すれば素晴らしい土地になる、と思ったので取得を検討しろと指示した」と、これまでの主張を覆した。
この副市長の証言により、上記の奈良補佐の証言は否定されたと判断せざるを得ない。

また、この新井副市長の「周辺と一体整備すれば素晴らしい土地になる」という真意は、「当該土地は無道路地ゆえ単独では使い物にならず、周辺と一体整備が必要だ」ともとれる。

7月9日
8.
中島土地開発公社参事、当該土地の調査に着手(登記簿謄本等の取得)

7月15日頃
9.
中島参事、小林不動産鑑定士に価格算定を依頼、ともに現地調査

7月23日
10.
小林鑑定士、公社に対し概算金額を報告(㎡63,000円)

柳田解説
8・9 公社の動きは,既に取得前提と思われる。

10.鑑定依頼する際、無道路地だが進入路がある前提で鑑定してくれ、等の条件は一切つけていない事に留意

7月23日以降、さほど遠くない日付
11.中島参事、奈良補佐に概算金額を報告

12.奈良補佐、中山主幹に概算金額を報告、公社予算の範囲内であることを回答

柳田解説
12.中山主幹は、奈良補佐から概算金額の報告を受けた。この際、取得は不可能とは告げられていない。ということは、矢島市議からの依頼の件は実現の可能性アリと認識したにも関わらず矢島市議への報告も怠っており、また、自身の本来業務である善行市民センターでの当該土地の「活用」についても何ら調査・検討していない。市民農園的利用ならば、農業水産課に相談して然るべきだが、それもしていない。
同様に、矢島市議も、中山氏に依頼後、何ら確認しておらず、その結果、売り主のM氏にも何ら報告していないが、?である。

さらに、奈良補佐は、新井副市長と現地調査に同行したにも関わらず、新井副市長に概算金額を伝えていない、としているが、考えられない。

7~8月頃
13.
奈良補佐、農業水産課に「善行で市民農園用地の取得を検討している」と情報提供する

14.中島参事、小林農業委員会課長補佐に対し、土地公社が善行の農地を取得すると告げる

柳田解説
13.奈良補佐の証言通りならば、(市民自治部の)善行市民センターの中山主幹に「取得するとしたら」として概算金額を報告しつつ、(経済部の)農業水産課には「善行で市民農園用地取得する」と告げたことになる。
しかし、奈良補佐へ相談したのは、あくまでも「善行市民センター」であり、農業水産課ではない。
余計なお節介ではないか?
善行市民センターが、農業水産課へ土地取得の報告をし、協力を依頼するのが筋だろう。

奈良氏の説明通りだとすると、自分に相談に来た課には「取得する場合には」と報告し、相談されてもいない課に「取得する」、と言ったことになるが??
つまり、財政課(奈良氏)としては、善行市民センターの相談とは無関係に「市民農園」をやる、と知っていたことになる。
誰の判断でそう思ったのか?
あるいは、「どこが担当部課で」「どのような事業のために」ということが不確かなまま、奈良氏は自分の憶測で勝手に動き、取得のための調査を行っていたことになる。
極めて不自然な話、である。

14.これらから、7月の時点で、既に市(新井副市長)は、取得する前提で動いていた、と判断せざるを得ない。
「陳情を受けて、取得を検討」した、という市の説明は、無理がある。
そして、11月18日の当委員会で、新井副市長は「7月の時点で取得を考えていた」とこれまでの説明を覆してしまった。

この新井副市長の証言によって、関係職員らが苦しい説明を重ねていたのが無に帰してしまったのだ。
(続く)