江ノ島水族館跡地問題

江ノ島水族館跡地を巡り、市役所は大変な騒ぎとなっている。
原田市議が9月定例会の一般質問でとりあげ、その後に神奈川新聞が連続して報道、一気に疑惑が火を噴いた格好だ。
一言で言うと、市が
「旧江ノ島水族館跡地を取得し、津波の際に機能する複合ビルを建設する」
という計画を策定したということだ。

私としては、市がそうした建物を建設すること自体は否定しない。
小田急線の片瀬江ノ島駅から片瀬漁港、江ノ島水族館あたりの一帯は、藤沢市の都市計画決定区域であり、今後の駅周辺の再整備などと併せ、エリア一帯を再開発する計画は以前からあった。
私は、前からあのエリアは市が主体的に再整備するべき、という立場であるので、今回の土地取得はむしろ「基本的に」歓迎なのだ。

だが、経過が酷すぎる。記事によれば、公文書偽造の疑いが浮上しており、今後深刻な不祥事に発展する恐れがあるのだ。

この件は、神奈川新聞が丹念に取材を重ねており、記事をお読みいただければ全容をつかめると思うが、ここでは私なりに記事の解説とともに持論を述べてみたいと思う。

まず、10月3日に、初めて神奈川新聞で報道。
一面への掲載であり、注目されていることが分かるが、この時点では、市の政策判断について紹介しているだけで、批判というよりはむしろ歓迎しているようですらあった。

だが、第2弾として10月20日には、
「当該計画は、計画建築部と経営企画部のみが策定に関わり、消防・観光など関連部局とは一切協議していないことが判明」
と掲載、一度目とは正反対の姿勢となる。

そして、第3弾の10月22日の記事では、書き出しが
「民間企業の所有地を取得しようとしている問題で」
となってしまった。
一回目の記事は、市の政策についての報道。
二回目は「疑問」、という記事。そして、
三回目では「問題」。新聞掲載を重ねるにつれ、批判のトーンが高くなっている。
もはや、「疑惑」である、と…。

詳しくは記事を読んでいただければと思うが、
4月7日に、市長以下18名が当該計画を承認、その起案文書が存在している。
しかし、計画承認の前提となる計画書は6月28日に作成されていた。

が、それでは辻褄が合わないので、計画策定の日付も4月7日とした、というもの。
公文書偽造の疑いが生じ、刑法犯という大問題に発展する可能性が出てきた。

なぜ、このような無茶をするのだろうか?
計画を煮詰めてから取得依頼するのでは、間に合わないのだろうか?
仮に、開発のおそれがあり緊急取得するのならば、計画は後からでも仕方がなく、ちゃんと各部門と調整すればよい。
日付を偽造する必要も全くない。取得と計画が前後してしまった理由を堂々と説明すればよいだけだ。

それが、出来なかったのかもしれない。善行問題を抱えていたので。
善行問題では「まともな計画がない」などと取得に至ったプロセスに批判が集中したから、同じ轍を踏まないために後から計画を策定し、日付を改ざんし辻褄を合わせたのかもしれない。
だとすると、善行問題の反省が文書偽造という形で出てきたということか。
ともあれ、ここまで詳細な取材を行って記事にした神奈川新聞の記者氏には敬意を表す次第だ。続報を大いに期待したい。

整理しよう。
市は、当該エリアを重点整備地区として平成2年に都市計画決定をしている。
その後、今年の一月には再整備計画を策定した、としており、それに基づいての土地取得である。
ので、善行問題のように、丸っきり計画が無かったわけではない、ことを前提としたい。
その上で、

1.関連部局と一切協議しないまま、一部で計画を策定
2.上記計画の策定日を記す文書が偽造
3.風致地区の規制を緩和(高さ限度15メートルを超える建物の建設を想定)
4.地域住民に何ら諮っていない

ことを指摘しておく。ついでながら、
5.議会に一切報告等がない
こともある。

また、別の意味で深刻なのが、当該土地の(事実上の)所有者が、海老根市長の有力後援者だということだ。
金額が高い、との指摘も出ているが、それは市長の後援者ということと関係しているのか?
と疑われている。

1.風致地区の高さ制限を緩和し、
2.より大きな(高い)建物を建築可能な土地にして、
3.わざと高い金額で取得しようとしている

まあ、風致地区の見直しを行うと言っても県の都市計画審議会の議決が必要となるはずだ。
これだけ騒がれ、計画自体の正当性が疑われる有様では見通しは暗いだろう。

善行土地問題も、市の不当性を裏付ける証言が相次ぎ、審査はいよいよ大詰めだ。
その渦中で起きた今回の文書偽造疑惑。
藤沢市行政の信頼は落ちるところまで落ちた。

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