片瀬山その3 県道横浜藤沢線

片瀬山地区での、ユニークな取り組みとして、建築協定と未来会議を紹介させて頂いた。これら、住民自ら積極的にまちづくりをしていこう、という頼もしい取り組みだが、もう一つ、自治会内に設置された機関である 「横浜藤沢線対策委員会」 を取り上げたい。 この横浜藤沢線は、国道1号線から134号線をつなぐ重要路線として都市計画決定された。授業主体である県、そして藤沢市はこの路線を「重要路線」と位置づけ、未整備区間の早期着工を目指している。

    道路概要:横浜市港南区(横浜環状2号)~藤沢市鵠沼海岸一丁目(国道134号)延長 約14.3km(うち藤沢市域5.7km)幅員 25m 4車線

藤沢市域分5.7㎞のうち、約2.6㎞が整備済みで整備率は46.2%であり、現在のところ川名から先は止まっている。川名の先は片瀬山地区となるわけだが、片瀬山では反対論が根強く、住民アンケートでも反対が多数という現状だ。
そうした背景から、自治会内部に専門の部会を設置することになった訳だ。 当初は「道路問題協議会」という一部住民の有志の活動だったのが、自治会にも関わってもらわないと全住民の問題だ、と言うことにはならない、と長年に渡って自治会に働きかけ、努力が実った格好だ。
この間の「道路問題協議会」の皆さんの献身的なご努力に対し敬意を表したい。

さて、片瀬山地区の反対に対して「住民エゴ」ではないか?という批判が地区内にもある。事実、都市計画決定は昭和32年であり、宅地分譲が始まる前だ。しかも、道路予定地は県が押さえており、片瀬山地区に限れば立ち退きは発生しない。
「後から来ておいて文句言うのはオカシイ」
という批判はある意味当然だろう。これに対する反論もあるのだが、それはひとまず置いておき、市の考え方をみてみたい。

本路線は、横浜市と湘南海岸地域とを結ぶ幹線道路で、本市の交通ネットワークの骨格をなす路線です。また、藤沢駅周辺地域の慢性的な交通渋滞の緩和に寄与する路線です。現在、本市域では鎌倉市関谷から県道藤沢鎌倉線区間について、平成11年12月に供用開始し、今後は、県道藤沢鎌倉線から国道467号までの約1.8kmについて早期に事業実施を図るべく順次準備を進めていきます。(最終更新日:2007年4月1日)

これについて、見ていこう。
まず、 本路線は、横浜市と湘南海岸地域とを結ぶ幹線道路で、本市の交通ネットワークの骨格をなす路線 はよいとして、次の 藤沢駅周辺地域の慢性的な交通渋滞の緩和に寄与する路線 というのは本当か?
駅周辺の渋滞は、東京・横浜方面からの通過交通だけが原因でないのではないか? もうひとつ、 県道藤沢鎌倉線から国道467号までの約1.8kmについて早期に事業実施を図るべくについて異論を述べたい。
これは、今止まっている川名から片瀬山の下の町田線までを先につくる、ということだ。

確かに、川名から467号線までは買収も進んでいるだろうが、片瀬山下の467号から海岸までは殆ど用地を確保出来ていない。
つまり、1号線から海まで、の見通しはなく、事実上1号線から片瀬山下の467号線で事業が止まってしまう可能性が高いのではないか?
そして、こんな事をしたら、片瀬山下から海岸までの渋滞は最悪の状況になるのは明らかだ。横浜藤沢線については、片瀬山地区の反対運動が一時期活発化し、また今や自治会にも道路の専門部会が設置されており、
「片瀬山が反対しているから横浜藤沢線が進まない」
という印象を広めている。しかし、467号まで横藤線が延伸した結果、重大な影響をうけるのはむしろ片瀬山地区ではなく、片瀬地区内の、住所でいえば片瀬・片瀬海岸と鵠沼地区の藤が谷・松が岡地区だと思う。

先般、市は計画道路の見直しを行った。
見直しの背景として、昭和30~40年代に計画された道路が、社会情勢の変化等で実現性・必要性が乏しくなった路線について、計画の廃止をする、というもので、必要な計画の再確認作業も併せて行われた。
この中で、横浜藤沢線は「存続」となっている。「重要路線」だから、当然といえば当然だが、一方で昭和32年に計画されて50年以上経過し、それでも開通に至らないのは計画にムリがあるからではないか?という素朴な疑問もわく。
ここで、見直しの際のパブリックコメントから、市民による横浜藤沢線反対の意見と、市の反論が市HPに掲載されているので、一部を紹介しよう。

意見1.横浜藤沢線の「存続候補」部分についての計画廃止を次の理由により求める。
 ・ 川名緑地の樹林や湿地等、自然豊かな環境・生態系への影響が懸念されるため。 ・ 鵠沼の情緒ある町並み・文化への影響が懸念されるため。 ・ 自然を残すことの方が、道路を通すことの価値よりも大きいと考えるため。

市の反論: 横浜藤沢線については、「かながわ交通計画」の一般幹線道路網に位置付けがあり、県が主体となって必要性を判断する路線という位置付けですが、本市においても必要性を確認するため、見直しの中で必要性の検証を行ったものです。
(柳田注:必要性に関しては揺るぎなし)
検証においては、自動車交通のシミュレーションを行い、その結果、ネットワーク全体の走行台時(自動車走行時間の総和)を減少させる効果があり、特に藤沢駅周辺において、県道藤沢鎌倉及び国道467号の混雑緩和に効果が認められること及びネットワーク全体の走行速度を向上させる効果が認められることから、自動車の交通機能及び環境機能の観点からの必要性が高く、「存続候補」に分類しました。
(柳田注:渋滞緩和に関してはにわかに信じがたい。例えば、今は江の島から藤沢駅まで1時間かかるところが40分になる、みたいな具体的なデータを見たい)

川名緑地の自然環境や鵠沼の情緒ある町並み・文化等への影響については、それらへの影響を少なくするような整備の方法を検討し、採用していく必要があると考えています。
(柳田注:道路を地下にする、という意味と思われる)

意見2.横浜藤沢線の「存続候補」部分についての計画廃止を次の理由により求める。
 ・ 国道467号から国道134号までの区間が整備されないときの周辺道路への影響が懸念されるため。

市の反論:今回の見直しにおいて、横浜藤沢線については国道134号までの全区間で必要なものと考えています。整備時期については、今後、関係機関等と連携し、具体化を図っていきます。
(柳田注:市は以前は「まず467号線まで」としていたが、そうした事はとりあえず謳わなくなった。ホントに134号までやる気があるのか、注目していきたい)

この他、様々な異論があり、それに対して市が反論・説明している。
いずれにせよ、私は横浜藤沢線については、反対ではない、というか、都市計画決定されている事実と、県・市の姿勢などから、住民の皆さんには申し訳ないが単純に反対するのは無理がある、と感じている。
さりとて、これまで述べてきた通り渋滞緩和など疑問が多い。
中でも、4
67号線でひとまず完成、そっから先は当分の間延伸しない、では片瀬山下の出口周辺が大渋滞するのは日の目を見るより明らかであり、認めることはできない。

県及び市は、私たちにも理解できるような論理、例えば道路建設コストとその効能、渋滞予測や環境への影響など、目に見えるデータをそろえて計画の合理性・正当性を説明してほしい。でなければ、道路に不安を持つ多くの人の納得を得ることは出来ないだろう。