100条委の結論その2 土地価格について

2012.03.31更新  [議会 ,100条委員会]

100条委員会の設置目的は

1.土地取得自体は適正か?
2.価格は適正か?

を調べることだった、のはこれまで何度も述べてきた。
取得自体が不当ならば、価格がいくらであろうがもはや関係無いとも言えるが、(当面は)不要な土地でも、それなりに価値があるのならば持っていてもよいかもしれない。
なので、やはり上記1.2.は切り離すことはできない関係にあろう。前回のブログで「取得と価格について解説する」と予告したのだが、ここはポイントを絞り、価格について説明したい。
長くなるが、ご興味のある方はお読み頂ければ幸いだ。

で、本来ならば取得自体の是非を問うてから価格を見ていくのだろうが、最終報告では不動産鑑定士とその人が行った鑑定評価について多くを割いた。
それは、昨年12月に100条委が出した「中間報告」で既に取得自体が「不当」との結論を出したからである。
中間報告を出した時点では、委員会による価格調査は行っておらず宿題となっていた。
そして、年が明けた2月初旬に委員会による不動産鑑定評価の結果が出た。価格は2760万円と、市側鑑定の四分の一である。
これが正しいのならば、「市側鑑定は高過ぎで不当な評価だ」ということになる。

この事を確認するために、再び市側鑑定士氏を証人喚問して尋問を行った結果、市側鑑定は不当で、それを誤魔化すために鑑定士氏は偽証したとの判断を固めることになった。
この「市側鑑定は不当だ」という判断の根拠は
不動産鑑定基準から逸脱している
ということである。

不動産鑑定士の仕事とは何か。いうまでも無いが、土地に値段を付けることである。
この国は、土地保有に対して課税している。
だが昔のように石高で課税するのもナンセンスなので、現代の石高、すなわち「利用価値」を「金銭的価値」に置き換えた指標が必要になるわけだ。
ここに、不動産鑑定士の仕事がある。
政府が土地に課税する際の目安が必要なのだ。これは、毎年かかる固定資産税だけでなく、相続税にも当てはまる。
そして、今度は銀行融資などの担保としての役割が求められるが、公の価格は目安になる。
また、民間がある土地を取得する際の目安にもなろう。

私たちは、個人で不動産を取得することがある。普通は自分が住むための家を買う場合だ。
だが、政府であれ銀行であれ、その金を使って土地を買う(あるいは担保をとる)というのはいわば「他人から預かった金」なのだ。
政府ならば納税者、の。
銀行ならば預金者、の。
企業ならば株主、の。

ヒトの金を使って土地を買うのだから、皆に説明できる「根拠」が必要になる。
そこで、不動産鑑定士の出番、となるわけだ。
ここは非常に重要なところであり、もう一度繰り返す。表現を変えて。

「他人様の金を使って土地を買うのだから、説明責任が生じる。その代わりを不動産鑑定士がやってくれる」
前置きが長くなったが、不動産鑑定評価の重要性について、ご理解頂けただろうか。

で、この国では「公示価格」というものが政府によって定められている。全国各地の代表的な土地・地点の価格を調査し、発表している。
よく新聞に出ているヤツだ。前年比何%減、とか、銀座のどこそこが日本一高い、とか。
これに次いで「基準地価」というものがあり、これは都道府県が定めている。簡単に言えば、国基準よりも多くの地点を定めている、といえるだろうが、この二つは同じようなもの、と考えて良い。
これらをもとに、市が課税する「固定資産税」、国が課税する「相続税」の評価額が定められているわけだ。

なので、例えば市が土地を取得する際に、これら公的な地価に基づくのは当然であろう。
その意味では、市側鑑定士氏が主張していた
「自分の鑑定は基準地価に基づいており適正だ」
「固定資産評価額と乖離してはならない」
という主張は理解できる。
市が固定資産税を課税している。その根拠は国・県が決めた地価だ。で、いざ、市がその土地を買う段になって
「固定資産評価は関係無い」
というのは無体であろう。いままでその額で課税しておいて…。

もっともである。
だが、市場の評価というものも、土地評価では重要な基準となる。
善行土地問題の一連の審査の中で、市側(含む議員・民間人)は、
「民民売買と公の土地取得は同列ではない」
との発言を繰り返していた。公ならば、高くかっても良い、と言わんばかりであった。

だが、そんなことはどこの法律にも書いていない。
公が土地を取得する際には「正常価格」に基づきなさい
、ということが補償基準(法ではなく政府要綱)に謳われているのみだ。
正常価格については、これまでも何度か述べてきたが、ようするに「一般的な相場」と考えて良い。
公だから、相場を無視して良い、などということは無いのだ。

で、今回は無道路地という特殊な事例であった。相場は無い、というか、はっきり言って市場では売れない土地である。
ゼロ、といってもよいが、まあ、値段をつけるのならば、道路がないから農地にしかならず、よって藤沢市内の農地の売買事例と比較して価格を想定する(しかない)ということになる。

確かに当該土地は市街化区域内にあり、農地といえど宅地にすることは可能ではある。
そこを市側鑑定士氏は強調していたが、道路がなければ宅地化は出来ないのだから、農地とおんなじ、とみるべきであろう。
現に、この土地を評価した他の三人の鑑定士は揃って「農地」並み、との評価をしている。

当該土地の固定資産評価が宅地並みになっているのも事実だが、実際の課税は農地なので宅地の三分の一となっている。
当該土地の評価が高いとしても、それは宅地になった場合を想定して、とりあえず高く評価しているだけで現実の課税は実体に合わせて農地課税をしているのである。
評価自体は高いが、実際の課税ベースでの評価は低いのだから「市が取得する段になって安く評価する」という事態は起きない。

さらに言おう。
「市が取得する際に固定資産評価を考慮しないと、課税と矛盾する」
的な発言をしていた、と紹介したが、今回のケースで言えば評価とは別に実際には農地として課税しているので当てはまらない。
では、一般論ではどうか。一人の鑑定士の意見としては有りかもしれない。

だが。
今回の彼の仕事は何だったのだろうか?
当然、当該土地の鑑定評価を行うことである。では、鑑定評価、とは何か?それは「正常価格」を導くことである。ただ、それだけ。

何が言いたいのか。つまり、市側鑑定士氏は、「公共が買うのならば」と盛んに繰り返していたが公共とかは関係ない。
買う主体が市であれ、民間・個人であれ、一般的な市場価格・相場価格が正常価格である。
ここがオカシイ。
そして「公共が買うのならば最大限の補償が必要だ」的な事を氏は述べていたが、それを心配するのはあくまでも「市」であって、鑑定士ではない。

ここは重要なので繰り返す。
鑑定士の仕事は、正常価格を算出すること。そこまで。
そこから先、すなわち鑑定士が導いた「正常価格」を踏まえ、実際に金を出して買うのは「市」である。鑑定士は公共取得の、いわば「参考価格」を出すだけであり、「取得金額そのもの」を提案する権限など無いのだ。
実際の市の取得価格を鑑定士が心配するのは「余計なお世話」なのである。

市側鑑定士氏の言い分は、市が実際に取得する金額をご丁寧に先回りして出してあげた、と言っているのと同義である。
そしてそれは、一般的な市場価格を算出するという不動産鑑定の業務から完全に逸脱しているのである。
もういちど繰り返す。
鑑定評価額と、実際の「補償価格」は同じでは無い。
市側鑑定士氏の証言は、ここが決定的にオカシイのだ。

別の言い方をしようか。
証人尋問の際、委員が「貴方の鑑定評価は不動産鑑定基準に則っていないのでは?」的な事を言って質したのに対し、市側鑑定士氏は
「補償基準というものがあり、それに則っているので問題ない」
的な発言をしていた。
これも決定的である。鑑定士が準拠するのは「不動産鑑定基準」でしかない。「補償基準」に準拠するのは、実際に買う「行政」である。たとえて言えば、和食の料理人が、「そんな魚の扱いはオカシイのでは?」と間違いを指摘されて「イタリア料理ではこうしている」と言って自分のミスを誤魔化しているようなものだろうか?ちょっと違うかな。

ともあれ、ここまでが市側鑑定士氏と他の鑑定士を分けた「原則的な部分」と言えるだろう。
で、具体的な鑑定の中身で言うと、市側鑑定士氏は当該地に生産緑地規制があることを無視しているという点であった。
生産緑地の制度について、詳細に述べることは避けるが、ようは「宅地になる土地を農地のままに据え置くことにより、市街地に農地を残して都市環境を保全する」というものだ
この規制のメリットは、土地所有者にとって、市街化区域内は農地でもそれなりに固定資産税が高い(前述の通り宅地の三分の一)が、生産緑地になるとほぼゼロになり営農が続けられる。宅地並みの税金を払って採算がとれる作物などないだろうから。
デメリットは、農地を宅地化して有効利用したいと思っても、規制解除の要件が極めて厳しいことである。

なので、当該土地は無道路地ということに加えて、進入路にあたる部分にこの規制がかかっており、よって宅地化は困難で、その結果売れない土地だ、という事になるわけだ。
ここで、市側鑑定士氏は「公共取得ならば生産緑地規制は解除できるので(無視しても)問題無い、と判断した」と述べていた。
これもオカシイことは、「正常価格」についてご理解頂いていればお分かりだろう。確かに公共用地として市が取得するのならば生産緑地は解除できる(歴とした計画があればだが)。
だが、この土地を買う「一般的な不動産市場参加者」に生産緑地規制を解除する権限はないわけで、買う側としては農地としての利用価値しかない、と判断するのが普通である。
ので、「(一般的な市場価格である)正常価格」を算出するのならば「農地価格」で、と判断するのが妥当であろう。
ところが、市側鑑定士氏は、生産緑地規制を無いものとし「宅地」として評価したのだった。
そして、このことは「現実にかなった想定で評価せよ」という不動産鑑定基準に反している。現に、公社が取得してから3年が経過した今も、当該土地は生産緑地に囲まれており、生産緑地では営農が続いているのが「現実」である。
市側鑑定は「非現実的」な鑑定評価だったのだ。

市側鑑定士氏の当委員会での証言はこんな調子であったので、やむなく偽証罪での告発を決めたのである。
で、そこには偽証の動機、というものがあるだろう。何か「不都合な事実」を隠すために虚偽の証言をする、というのが想像に易い。
今回、委員会として偽証での告発は三名。前市民自治部長、善行地区自治会連合会会長、市側不動産鑑定士。
前の二人は、取得そのものに関しての偽証の疑いである。当委員会は
「取得ありき。価格ありき(約1億円)」
と疑っている。そのことを隠すために証人各位は偽証していたのでは?との判断である。

これ以上の詳細については、議会のHPに報告書全文が掲載されており、今回あらたに別添資料としてA3版のチャート図も作成したので、あわせてお読みいただくと分かりやすいかもしれない。ご興味のある方はそちらを参照して頂ければ幸いだ。
それにしても、大論文になってしまった。長文で大変申し訳なかったが、ある程度説明しようとするとこうなってしまう。これから市議会レポートを作成するつもりだが、どうやってまとめたらよいのだろうか(苦笑)。
この結論に至るまで随分と苦労したが、終わってみる何とも平凡である。まあ、玄人には当たり前の事が分からないから素人なのだな。仕方がないか。

ともあれ、これにて100条委の解説は終了。ここまでお付き合い頂いた方、心より感謝申し上げたい(了)。